April 14, 2021
Restaurant État d'esprit
Restaurant État d’espritのディナーは、渡真利泰洋氏の洗練されたほの暗いダイニングルームではなく、プライベートヴィラで供されるシャンパンと小さなフィンガーフードからスタートする。しかし、その前に飲んでおきたいのが苦みのある日本のハーブ、ヨモギで作った少量のドリンクだ。亜熱帯の沖縄の食になじみがないゲストにとって、それはこれから体験する未知の味、驚きの味の最初の一品だ。
渡真利氏はその手の込んだ斬新な料理の食材を、生まれ故郷の宮古島と、それに隣接する伊良部島から調達する。État d’espritは、8棟のプライベートヴィラからなる伊良部島の豪華リゾート「紺碧」のメインダイニングだ。渡真利氏はフランス料理店での経験を生かし、沖縄の味と伝統にインスピレーションを得て編み出したファインダイニングへの独自のアプローチを、かつて沖縄にあった王国の名を冠して「琉球ガストロノミー」と呼ぶ。
全8皿のテイスティングメニューの目玉の1つは、ウミヘビの燻製や沖縄の豚、ショウガ、そして沖縄で広く飲まれている強い蒸留酒泡盛などを使って仕立てる濃厚なスープの「オトーリ」だ。独特の臭気を放つ豆腐発酵食品の豆腐ように漬け、うま味豊かに味付けした蟹も忘れられないひと皿だろう。島で繁殖した外来種で、害鳥として駆除される孔雀の肉からつくる濃いスープは、麺と相性がよい。
長年にわたる観光業の著しい成長による社会や環境への影響を懸念し、料理によって環境保護に貢献したいと考える。渡真利氏にとって、それは失われつつある故郷の文化を守ることでもある。