国土の7割を森林が覆い、世界で6番目に長い海岸線が取り囲む。
南北に長く、気候は多岐に渡り、動植物の種類は多様性に富む。
そんな日本の濃密な自然を舞台として、そこでしか体感できないシェフの創造性を味わう時代へと、レストランシーンの最前線は突入している。
「Destination Restaurants」では、訪れるべきレストランを毎年10店ずつ選んで発表していく。
Cuisine régionale L’évo
The Destination Restaurant of the year 2021
「期待するのも楽しみのうち」。日ごろそう信じている人は、レヴォまでの道のりにもきっと魅力を感じることだろう。オーナーシェフの谷口英司氏が開いた新しいレストランは、富山市の中心市街地から車で2時間強、いくつも森を抜け、湖を通り過ぎ、細い曲がりくねった山道を上った山の中にある。
チミケップホテル
北海道東部の山間部、手つかずの自然が残るチミケップ湖を見渡す深い森の中にチミケップホテルはある。冬の雪景色や夏のアウトドア、澄んだ空気を目当てに訪れる人もいれば、極上の食の体験を求めてやってくる人もいる。
日本料理 たかむら
秋田市の閑静な住宅街にある日本料理たかむらは、市中心部の賑やかな飲食店から一線を画す存在だ。店主・高村宏樹氏はあえて、地元の他の料理店のメニューにのる郷土料理とはまったく異なるスタイルの料理を提供する。
とおの屋 要
岩手県の中心部に位置する佐々木要太郎シェフのオーベルジュ兼レストラン「とおの屋 要」は、日本で他に類を見ない存在だ。木造の米蔵を移築して改装し、伝統とコンテンポラリーなスタイルをシームレスに融合させた趣あるレストランは、日本でもまだあまり知られていない、この地方特有の食文化を存分に楽しませてくれる。
Restaurant Uozen
料理人・井上和洋氏と妻の真理子氏は、東京で経営してきた人気レストランをたたんで新潟県に移住した。向かったのは三条市の郊外。高級料理よりも職人の金属加工技術で知られる土地だ。
片折
豊かな風味と地元の新鮮な食材へのこだわりの強さという点で、片折は唯一無二のレストランではないかと思わせる。石川県金沢市の浅野川左岸、この静かな一角にひっそり佇む料理人・片折卓矢氏の小さな店は、オープンしてわずか3年にもかかわらず、すでに日本で最も予約がとれない店の1つに数えられる。
すし処めくみ
日本海に面する金沢市は、新鮮な海の幸の宝庫として知られる。すし処めくみの主人・山口尚享氏は、毎朝、数百キロ離れた能登半島の漁港に車を走らせる。水揚げされた魚を目利きし、その日7人の客のために納得のいく最高の素材を仕入れるためだ。
日本料理 柚木元
父親が料理人として名を馳せた店「柚木元」の向かいに「花れ」を出したとき、萩原貴幸氏は伝統を貫いていこうと決めたという。料理人がカウンター席の客の目の前で料理を作る、オープンキッチンが人気の割烹スタイルを取り入れることもできたが、それはしなかった。代わりに、自分が最も良いと感じていたやり方、つまり個室で客をもてなすことにこだわった。
Pesceco
Pescecoは、穏やかな有明海と、その向こうに九州本土の海岸線を見渡す島原半島の海辺にある。井上稔浩シェフが作る独創的な魚介料理は、この店の前に広がる自然豊かな風景からインスピレーションを受けたものであり、随所にそれが表現されている。
Restaurant État d'esprit
Restaurant État d’espritのディナーは、渡真利泰洋氏の洗練されたほの暗いダイニングルームではなく、プライベートヴィラで供されるシャンパンと小さなフィンガーフードからスタートする。しかし、その前に飲んでおきたいのが苦みのある日本のハーブ、ヨモギで作った少量のドリンクだ。亜熱帯の沖縄の食になじみがないゲストにとって、それはこれから体験する未知の味、驚きの味の最初の一品だ。
「食に精通したスタッフが自信を持ってお届けできるお店だけを厳選し、ご予約、会計までワンストップで提供している「ポケットコンシェルジュ」。予約困難なお店で空席が出た際に優先的にご案内するサービスや会員様限定イベントなど、様々な特典を随時更新のうえ、ご紹介しています。」
「Destination Restaurants 2021」は、2021年4月にジャパンタイムズが発表した、日本のベストレストランを選定したリストだ。その「Destination Restaurants 2021」の発表を記念し、日本の食文化の魅力をテーマに、2021年12月、ジャパンタイムズ本社にて特別セッションが行われた。ゲストは、辻調理師専門学校校長でDestination Restaurantsリスト選考委員の辻芳樹氏と、Destination Restaurantsリストのスポンサーで、アメリカン・エキスプレスのダイニング事業のひとつである「ポケットコンシェルジュ」の代表取締役、戸門慶氏。ファシリテイターはジャパンタイムズ社の代表取締役会長である末松弥奈子が務めた。
日本人は、長い年月をかけそれぞれの地域の風土にあった、特色のある豊かな食文化を育んできた。また海外の料理も積極的に取り入れ、日本の食材や調理方法などを駆使しカスタマイズしながら独自の料理に昇華させるという側面も持っている。しかし、日本のそんな特徴のある食やレストランの評価といえば、どうしてもこれまで海外の視点や価値基準で判断・評価される傾向にあった。そんな日本のレストランの評価を、日本人が日本人の視点で海外へ向け発信していこうという取り組みがこの日本発のレストラン・リストの発表につながった。
辻芳樹
辻調グループ代表。学校法人辻料理学館理事長・辻調理師専門学校校長。一般社団法人全日本食学会理事。「Destination Restaurants」では選考委員を務める。
戸門慶
ポケットコンシェルジュ代表取締役。2011年創業。2019年1月アメリカン・エキスプレスのグループに加わる。ポケットコンシェルジュは、厳選されたレストランのみと提携したレストラン予約サービスで、予約の取れない名店・良店の空席情報の受け取りや、常連客のみの店舗でのウェイティングリスト登録などのサービスがある。