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May 27, 2025
日本料理 別府廣門

大分県別府市は日本有数の温泉地。約2600本もある源泉数と湧出量では日本一を誇り、毎年800万人を超える観光客が訪れる。別府駅周辺はカジュアルな飲食店が連なる繁華街で賑わいがあり、歩くだけでワクワクする。また、別府湾を擁するため海産物にも恵まれている。そんな土地柄ゆえ徐々にガストロノミーなレストランも増え、その代表格が別府駅から車で20分ほど山側に登ったところにある『日本料理 別府 廣門』だ。
店主、廣門泰三は大分県別府市で生まれ、板前である父のもとで育った。高校卒業後は大阪の料亭で日本料理の基礎を体に染み込ませ、その後、広島県で蕎麦打ちの名人、高橋邦弘が率いる『達磨・雪花山房』で1年間、そば打ちを学び、2016年から4年間は東京で人気の日本料理店で2番手を務めた。その後はフグの調理師免許をとり、2021年6月、別府市に『日本料理 別府 廣門』を開いた。
店はカウンター8席の割烹スタイル。料理は¥28,500(税込)のおまかせコースのみ。食事が始まると、次に調理をする魚がまず、生きたままで登場する。水の中で泳ぐ鮎、うねるタコ、跳ねる海老などだ。
「独立するにあたり、ここでしかできない料理を出すにはどうしたらいいかを考えた結果、水揚げからゼロ時間の魚を提供できるのは産地だけだという結論に至りました。今、魚は熟成させる手法が全盛ですが、市場から海水に入った状態で店に持ち帰り、活かった状態のものを扱っています」と廣門は語る。
ついさっきまで生きていた魚は捌いた直後は硬い。そのため、刺身にする場合は盛り付ける皿の文様が透けて見えるほど薄く引く。口に入れるとコリコリした食感で、新鮮さゆえの甘みや磯の香りがする。それは廣門が言うとおり、産地ならではの表現だ。また、秋になれば、実は害獣駆除による捕獲量が日本一という鹿、そして猪などのジビエも炭火焼や鍋になって登場する。
そんな『日本料理 別府 廣門』の厨房には3人の弟子がいる。
「都会で修業しなければ一流になれないというのではなく、この街で私が彼らを一流の職人に育てたいんです。『大分は食材がいいね』に加えて『料理もおいしい』と言ってもらえるよう、次世代の技術や料理人としての姿勢も向上させて、別府を盛り上げていきたいですね」と廣門は語る。
■Sustainable Japan Magazine (Sustainable Japan by The Japan Times)
https://sustainable.japantimes.com/jp/magazine/530





