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June 20, 2023

レストラン パ・マル

ブランド食材の産地、山形県で戦うフレンチ。

  • Destination Restaurants 2023
  • 山形県
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日本の地方にあるフレンチレストランはこの20年間で飛躍的においしくなり、軒数も増えた。とはいえ、東北ではまだまだその数は限られる。『レストラン パ・マル』は山形市にある唯一の本格フレンチと言っていいだろう。場所は東北新幹線も停まるJR山形駅から車で約10分。江戸時代の俳人、松尾芭蕉が歴史的な名句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を紀行文『おくのほそ道』に残したことでも知られ、宝珠山立石寺(通称「山寺」)や銀山温泉など、周囲の温泉と合わせて旅のスケジュールを組むのに、ちょうどいいロケーションにある。

オーナーシェフ、村山優輔が目指すのはガストロノミーな料理。昨今では本場フランスでも減少している、ワインやブランデーなどの酒類をふんだんに用いるクラシックなソースを重用するスタイルで、その主役は地元食材である。通常、地方のレストランでは地元で採れた新鮮で安価な食材を使うことを強みとするが、山形県では事情が異なる。

「さくらんぼや山形牛を筆頭に、山形県産の食材は高級ブランドとして首都圏を中心に県外に高値で流通します。そうなると物価が安い地元の飲食店では使えません。地元の人が外食で使うのは客単価4千〜5千円の居酒屋がほとんど。そこでは野菜も含め、外国産が多く使われるのが当たり前になっています。つまり、地元の人が外食で山形県産食材に触れる機会が少ない。その状況を変えたい。まずは地元の人に山形県の食材の魅力を知って欲しいという思いで料理を作っています」と村山は語る。

リエットには平田牧場の三元豚と庄内鴨、タルトにはヤリイカ、メインには甘鯛、鹿、あしらいには地元では伝統的に栽培され食用される菊、ほかアーモンドやフランボワーズなど、海も山もあり、寒暖差が激しいという、ものがおいしく育つ条件を備えた土地の恵みが皿に乗る。また、郷土料理の芋煮を醤油ではなく、コンソメで仕上げ、土地の食材とフレンチの融合を巧みに演出している。

村山は2002年に天童市でビストロを始めたが、2017年に現在地に移転リニューアルした際、ガストロノミーなフレンチレストランへと路線変更。主に村山と海外でワイン醸造に携わっていた弟であり、メートルの竜章で切り盛りしている。ディナーコースで¥11,000と¥16,500(税・サ込み)は市内では圧倒的に高額だ。

「山形県全体の飲食の客単価を上げたいんです。山形県の人口は今年5月の発表では104万人余り。前年より1.31%の減少で、全国4位の減少率となっています。そんな状況でもこの地で商売をしていくには、いい料理を作って観光客に来てもらうしかありません。山形名物のラーメンやそばもいいですが、ガストロノミーなレストランこそが、遠方からお客さんを呼ぶ力をもつと考えています。そして、東京の方が儲かるというのではなく、山形県でもやっていけるということを若い世代に伝えたい。日頃から『僕が値段を上げるから、君たちも上げなさい』と東京で修業して帰ってきた若手シェフにも話しています」(村山)

現在は首都圏を中心とする県外からの客が8割を占めるが、地元客も増えつつある。さらなる山形県民の意識改革のため、村山は他地域の有名シェフとのコラボレーションも定期的に行い、県内外に発信を続ける。未来の山形県の食シーンは確実に変わっていることだろう。

■Sustainable Japan Magazine (Sustainable Japan by The Japan Times)
https://sustainable.japantimes.com/jp/magazine/361

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レストラン パ・マル

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山形県山形市七日町2-3-16

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