「Destination Restaurants List」はジャパンタイムズが主催する日本発信のレストランセレクション。“日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト”として2021年に発足した。第3回目となる「Destination Restaurants 2023」は、第1回・2回から引き続き、辻芳樹氏、本田直之氏、浜田岳文氏の3名が選考にあたり、日本各地に点在する魅力的な10店を選出した。
このリストで選考対象となるのは「東京23区と政令都市を除く」場所にある、あらゆるジャンルのレストラン。「東京は世界一星の数が多い都市」と言われているだけでなく、東京以外のほかの大都市にもすぐれた店はたくさんある。だが、このレストランリストでは、「日本の風土の実像は都市よりも地方にある」、「地方で埋もれがちな才能の発掘を目指す」、「既存のセレクションとの差別化を図る」、以上の3つの点から、あえて地方のレストランに限定したリストとなっている。
「インバウンドの集客が期待できるレストランが1軒あるだけでも、その地方の経済は活性化し、地方の再生につながる。その一助になれば」と浜田氏は言う。「観光資源に交通の便、そして宿が揃っている地域でなければ、なかなか足を延ばせないなど、地方には様々な課題はある。だが、地域のレストランが脚光を浴びることで、その地の食材も含めてPRができるというのは非常に価値のあること」と辻氏。また、本田氏は「地方のいい店が年々増え、また注目されるようになってくると、若いシェフが地元で挑戦しやすくなる」と次世代への影響力についても語った。コロナ禍の規制が解除され、海外から日本へ訪れる旅行者数が大幅に回復する今、このリストの果たす役割は、さらに大きなものになるだろう。
HAGI
The Destination Restaurant of the year 2023
オーナーシェフ、萩春朋が地元、福島県いわき市産の野菜や魚、肉などを使った、フレンチベースの料理が評判だ。生産者とともに歩む姿は東日本大震災と福島第一原発事故の影響を受けた土地に再び自信を取り戻す、復興の象徴となっている。
青森県
江戸時代には八戸藩の城下町だった、日本有数の漁港を抱える青森県八戸市に店を構える。オーナーシェフ、池見良平はフレンチとイタリアンの技術を用い、魚介類はもちろん、国産では珍しい飼育イノシシなどの青森産食材を華麗な一品へと昇華させる。
山形県
奥羽山脈の西側に位置する山形市で唯一の本格フレンチレストラン。地元出身のオーナーシェフ、村山優輔はソースを重視したクラシックなひと皿から、郷土料理である芋煮をフレンチに仕上げた意欲作まで、引き出しの多い作風でゲストを魅了する。
栃木県
餃子の街としても名高い栃木県宇都宮市で、オーナーシェフの音羽和紀、長男の元、次男の創という親子2代で店を営むフレンチレストラン。和紀が開発から携わった伊達鶏など、栃木の食材を洗練された手法で現代的なフランス料理に仕上げている。
山梨県
「愛は胃袋を通ってやってくる」という信念を店名に冠したレストラン。店は、日本百名山5座を擁し、かつて宿場町であった山梨県北杜市の古民家を改装した一軒家。狩猟免許も取得したオーナーシェフ、鈴木信作が提供するコースは遊び心満載。乳幼児も利用可だ。
長野県
東京から新幹線で約1時間の避暑地、長野県軽井沢にある宿泊施設内に2020年に開業。オープンするや否や予約困難の店となっている。シェフ鈴木夏暉は、イタリアで修業後、デンマークの〈ノーマ〉や〈カドー〉で身につけた発酵技術を活用し、地元食材を新しい味に仕上げている。
新潟県
冬は雪深く、日本有数の米どころである新潟平野に位置する新発田市は新発田城や温泉など、観光資源にも恵まれる土地だ。1954年に創業した〈登喜和鮨〉3代目、小林宏輔は地元産の米と湧水から作る酢飯と季節の魚介を用い、寿司をさらに進化させている。
富山県
江戸から明治期にかけて、北前船の交易で栄えた街並みが残る東岩瀬町に、地元の酒造元〈桝田酒造店〉が手がける街再生プロジェクトの一環として、2011年にオープン。オーナーシェフ、藤井寛徳が引き出す富山食材の魅力で国内外のゲストをもてなす。
奈良県
8世紀に都があり、歴史ある神社仏閣が多い奈良市の日本料理店。店主、西原理人は〈京都吉兆嵐山本店〉で修業後、ニューヨークやロンドンの日本料理店を経て、2015年に独立。奈良を中心とした日本の食文化を独自に解釈してつくる料理が注目される。
沖縄県
沖縄本島から約2kmの橋を渡って行く小さな離島、古宇利島でオーナーシェフ、小杉浩之が腕を振るう。青い海を眺めながらいただくディナーは25皿前後。島豆腐のような郷土料理なども取り入れつつ、フレンチベースの独創的な世界観が繰り広げられる。
「Destination Restaurants」は、ジャパンタイムズが主催する日本発信のレストランセレクション。“日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト”として2021年に発足。第2回目となる「Destination Restaurants 2022」でも前回同様、辻芳樹、本田直之、浜田岳文の3氏が選考にあたり、日本各地に点在する魅力的な10店を選出した。
国土の7割を森林が覆い、世界で6番目に長い海岸線が取り囲む。
南北に長く、気候は多岐に渡り、動植物の種類は多様性に富む。
そんな日本の濃密な自然を舞台として、そこでしか体感できないシェフの創造性を味わう時代へと、レストランシーンの最前線は突入している。
「Destination Restaurants」では、訪れるべきレストランを毎年10店ずつ選んで発表していく。
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